JR線や京急線、国道15号線(第一京浜)で多摩川を渡る際、西側(山側)に赤白の細い鉄塔を見ることができますが、あれは何でしょう。
あの鉄塔、アール・エフラジオ日本の送信所、AM放送の送信アンテナなのです。付近の多摩川が大きく蛇行しているので、一瞬、東京都大田区内に設置されていると錯覚しますが、神奈川県川崎市の川岸にあるのです。
この送信所、川崎競馬の練習馬場と厩舎に隣接している上に、道路(多摩川沿線道路)を挟んで陸側に送信所建物、多摩川川岸側に送信アンテナが建てられています。あまり推奨は出来ませんが、送信アンテナの直下まで近づくことができます(付近の様子は、ストリートビューなどでも見られます)。
では、なぜこのような場所にあるのでしょうか。
結果として、あのような場所しかなかった、移転しようにも放送局本社から急行できる至近距離で良好な場所が確保できず、費用も含め移転は現実的ではないからのようなのです。これは、大都市圏のAMラジオ局も同じ状況で共通の重大問題になっています。
AMラジオ放送で送信所とアンテナを建てるには、技術上、広大な土地が必要です。関東広域圏を放送エリアとするTBSラジオ、文化放送、ニッポン放送とも、アール・エフラジオ日本と同様、川岸など水辺に送信所を設置しています。しかし、津波や洪水、地震などの大規模災害が発生すれば復旧作業を含め継続放送が難しくなることが長期間認識されており、東日本大震災発生で、喫緊の重大リスクになりました。
また、大都市に林立する大型建造物による、受信しにくい地域の拡大という「都市型難聴」の問題や、圧倒的に強力な出力で放送している海外電波との混信問題もあります。
AMラジオ局が抱える、送信所の災害リスクをはじめとする問題。リスク回避の現実的な方法として、FMラジオ波での同時放送「FM補完中継」(ワイドFM)制度が始まり、全国的に現在実施中の局、実施に向け準備中の局が増えています。
(ラジオのデジタル化、デジタルラジオも古くから検討され試験放送も実施されましたが、こちらは、エフエム東京(TOKYO-FM)グループが孤立推進となってしまいました。デジタル機器との親和性が高いものの、対応端末・機器・放送設備の普及が必要、費用がかかるというのがネックだったようです。)
さて、アール・エフラジオ日本。横浜・伊勢佐木長者町の本社よりも、東京・麻布の支社が放送局本社らしい状況であったり、日本テレビ系ラジオ放送を標榜し、神奈川県県域の壁を越えようとしています。が、同局のFM補完中継をしようとする動きは今のところ見られません。